2005 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀フランスにおける反ジャンセニスム:レオナール・ド・マランデの論争から
Project/Area Number |
05J10177
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
御園 敬介 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ジャンセニスム / 反ジャンセニスム / ポール・ロワイヤル / 聖職者会議 / フランス17世紀 / レオナール・ド・マランデ / フランソワ・ボスケ / 神学の大衆化 |
Research Abstract |
本年度の研究は、マランデの著作の分析をもとに、次の2点を考察することに費やされた。すなわち、17世紀中庸のフランスで激化した反ジャンセニスム運動の展開枠組み、及び同運動を支えた基本的な戦略に関する考察である。既存研究蓄積の薄い主題を扱う本研究は未だ萌芽状態にあるが、以下その各点について、研究の実施結果及び得られた知見を記す。 反ジャンセニスム運動の展開枠組みに関しては、1655年にマランデが出版したTraduction fidele du dernier decret d'Innocent X.と題された文書が考察の出発点となった。我々は、フランス国立図書館、マザリーヌ図書館及びフランス国立古文書館に保存されている聖職者会議関係の文書や、同会議代表としてローマに派遣されたフランソワ・ボスケの書簡をもとに、マランデのこの文書の出版をめぐる錯綜した歴史的経緯を追うことによって、反ジャンセニスム運動が、国王、マザラン、フランス聖職者全体会議、高位聖職者会議、ローマ教皇、フランス司教団、高等法院といった様々な要素を横切る包括的な問題であることを確認した。 反ジャンセニスム運動の基本的戦略の考察は、マランデの初期著作に見られるスコラ神学の大衆化vulgarisationの試みと、その試みの論争への適用とを分析することを通して行われた。大衆化論者vulgarisateurとしてのマランデに関するこの分析は、反ジャンセニスム運動の基本的な方向性を理解することを可能にした。つまり、「ジャンセニスム」を幻影として拒否したポール・ロワイヤルに対してその名称を付与しながら、専門化のみならず一般信徒にまで広く「ジャンセニスム」の実在性、党派性、危険性を浸透させようとする反ジャンセニスム運動の基本的戦略である。そこから生じる様々な批判論点の理論的考察や抑圧手段に関する歴史的考察は、来年度の課題となる。
|