2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10216
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河本 和子 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 近現代史 / ロシア:ソ連 / 政治体制論 |
Research Abstract |
前年度までに収集した資料および文献の分析を行い、前年度に学会報告した「民主主義・自己統治・分業-1960年代ソ連における分業に関する論争を通して」を加筆修正する作業を行った。これに関し、ロシアでの補完的な資料・文献収集を予定していたが、こちらの希望した期間に査証を取ることができず、やむを得ず断念した。このため、今年度の資料・文献収集は国内で行った。分析作業はなお続行中である。 上記報告の加筆修正作業において、新たに判明したことは、分業に関する論争の背景ならびに論争において政治のあり方にかかわる側面が無視された事情である。すなわち、当時の政治指導者フルシチョフのリーダシップの下、共産主義社会を急速に建設しようという目標が掲げられ、フルシチョフ期特有の理想主義的な改革(農業・工業分野、党組織、教育などでの)が行われ、共産主義社会を目指すための新たな党綱領が定められた。理論上、共産主義社会が実現した暁には、分業がなくなり人間が解放され、新たなタイプの人間が登場するはずである。しかし、経済活動が発展するにつれ、分業は避けがたい現実と理解されるようになっていたため、この点をいかに理論的に解決するかという点が、社会学者、経済学者、哲学者の間で意識されるようになった。こうして分業の存在と共産主義建設をめぐる論争がおこなわれることになった。このような問題設定故に、経済活動を担うという局面だけをとらえ人間がいかにあるか、あるべきかといった点に議論が集中することとなり、政治の場面で分業がもたらす影響について論じられなかったと考えられる。 そのほか、2005年11月に日本国際政治学会研究大会(於札幌コンベンションセンター)にて行った報告を書き改めた「ジェンダーと政治秩序-ソ連からロシアへ」が『国際政治』152号に掲載された。
|
Research Products
(1 results)