2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10245
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 玲 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 日本仏教思想 / 近世仏教 / 近代仏教 / 国際意見交換 / アメリカ / 大乗非仏説 / 須弥山説論争 |
Research Abstract |
本年度は、4月から8月までは、これまでの研究をふまえて、近世仏教の思想家である普寂の華厳思想について研究を進め、学会発表と論文発表を行った(学会発表「普寂の華厳理解」第56回日本印度学仏教学会学術大会、平成17年7月29日。論文「普寂の華厳理解」『印度学仏教学研究』54-1)。この発表によって、18世紀の思想家であった普寂が、江戸から明治にかけて仏教近代化の大問題となった「大乗仏教は、歴史的な釈迦の説ではない」という大乗非仏説の問題を、華厳の教理思想と実践行によって、思想的に解決していることを明らかにした。 9月からは、アメリカのプリンストン大学のJacqueline Stone教授のもとへ、研究留学を行い、近世から近代にかけての日本仏教の思想的推移について、国際意見交換を行った。その成果として、Workshop「18世紀の日本仏教と西洋科学-最初期の須弥山説論争」(Princeton University Buddhist Studies Workshop Spring 2006、平成18年2月22日)を発表した。この発表では、仏教の宇宙観をめぐる18世紀の論争を対象として、仏教者と世俗的知識人の双方の思想を明らかにすることにより、すでに18世紀において仏教思想近代化の萌芽があることを述べた。 日本の伝統仏教において、近世から近代にかけての思想史的な問題は、仏教の信仰と科学的合理性の矛盾(具体的には、上記の大乗非仏説と仏教の宇宙観について)であった。従来の研究では、仏教思想における信仰と科学の矛盾の解決は、明治30年代になってようやく可能であった、とされてきた。しかし本年度の研究により、明治近代における仏教思想の近代化・信仰と科学の矛盾の解決は、近世からの思想的営為を引き継いだものであり、伝統的思想の水脈上にあることを示した。本研究は、これまで等閑視されてきた、伝統仏教における近代化の研究の端緒をひらくものである。
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Research Products
(2 results)