2005 Fiscal Year Annual Research Report
ジャック・デリダの「テレコミュニケーション倫理」の構築:討議民主主義論の新地平
Project/Area Number |
05J10249
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 裕助 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | デリダ / テレコミュニケーション / テレテクノロジー / コミュニケーション / 脱構築 / ド・マン |
Research Abstract |
本研究の初年度である17年度の研究実績は、概ね二つの側面に要約することができる。 1.テレテクノロジーとテレコミュニケーションの研究 「テレコミュニケーションtelecommunication」とは、当研究者のこれまでの研究で練り上げられたデリダ独自の言語哲学概念である。この接頭辞「tele-」は、「隔たり」や「疎隔性」を含意しており、近接性や透明性を規範化する既存のコミュニケーション理論(特にハーバーマス)への批判を要約しているが、本研究において新たに問われたのは、電子メールやインターネット等に代表される、現代のテレテクノロジーによってもたらされた電子的公共空間が、国家の警察権力の介入可能性の増大と表裏をなすという問題である。この問題は、デリダ『歓待について』(1996)等の検討の結果、民主主義的なコミュニケーション、浸透性、透明性等が自らの空間を拡張すればするほど、私的空間と公的空間とが混交するグレーゾーンにおいて、警察権力や政治化も拡張してしまうという逆説として明確になってきた。初年度は主に、こうした問題領域への画定と深化、および、関連する研究に費やされた。その主要な成果は、過去の研究において蓄積されてきたデリダの「討議倫理」をふくむ政治哲学の問題群へと接合されて発表されることになっている。 2.本研究に関わる周辺的なテーマをめぐる予備研究 本年度発表された研究は、1.の研究に関連して行われた予備的な諸研究である。具体的には、(1)後期デリダの政治哲学に影響を与えているポール・ド・マンの美学・政治的著作の検討、(2)当研究者および本研究の視座を背景として試みされた「いま、哲学とは何か」という問いへの素描、および(3)デリダの思想を要約する「脱構築」という方法論の定式化、である。
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Research Products
(4 results)