2005 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀ロシアのタタール人-中央ユーラシアとロシアへの二重の帰属意識の研究-
Project/Area Number |
05J10260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱本 真実 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ロシア / 中央ユーラシア / 中央アジア / タタール / 18世紀 / エリート / カシモフ・ハン国 |
Research Abstract |
本年度は、課題の研究を進めるための準備期間と位置づけ、17世紀後半以降、ムスリムであるタタール人たちが、ロシアに対する帰属意識を形成していく過程を集中的に研究した。まず、2005年4月22-24日にイスタンブルで行われた国際学会「キプチャク・ハン国とその後継諸国」において、「カシモフ・ハン国の消滅--サイイド・ブルハン(ヴァシーリー)の治世を中心に--」という題目で、英語で発表を行った。ここでは、17世紀半ばにロシア正教に改宗した、ロシアの傀儡政権カシモフ・ハン国の君主の動向に焦点を当てて、ロシアの領土内にいたムスリムたちが、18世紀初頭までに、強力なロシア化政策にさらされていく過程を明らかにした。 また、本年度は、「テュルク系エリートのロシア化とロシア人エリート社会-17世紀末のナルベコフ家系譜を中心に-」『内陸アジア史研究』(内陸アジア史学会)第20号と、17世紀ロシアにおける非ロシア正教徒エリート政策」『スラヴ研究』No.52(北海道大学スラヴ研究センター)の2本の論文を公表した。前者においては、ロシア人貴族社会において、タタール人の出自を誇る風潮に注目し、この傾向を、ロシア貴族の系譜を用いて具体的に考察した。後者においては、17世紀において、ロシア政府がタタール人に対して採用した政策を、ロシアに居住した西欧人に対する政策と比較しつつ解明し、両者に対する政策が17世紀末までは同様の傾向を有していたことを示した。 9月には、モスクワへ一週間資料調査に赴き、その後、パリにおいて2週間、17-18世紀初頭のロシアにおける非ロシア人をテーマとするサマースクールに参加した。 2006年1月には京都大学文学部に「聖なるロシアのイスラーム-17世紀におけるムスリム上層階級ロシア化の研究-」と題する博士論文を提出した。
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Research Products
(2 results)