2005 Fiscal Year Annual Research Report
規範と芸術フランス19世紀前半における国語教育と文学
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05J10320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笠間 直穂子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 19世紀フランス文学 / フランス語教育史 / 学校文法 / フローベール |
Research Abstract |
フランス19世紀前半の国語(フランス語)教育と文学制作との関連を明らかにする作業の一年目として、今年度は該当年代の「公教育教育団認定教科書」に含まれる国語教科書を順次購入し、初級文法教科書の序文や章立てに示される文法観、タイポグラフィや修辞学など狭義の「文法」の外部に位置する事項の扱いなどについて調査を進めた。また、夏期の二ヶ月間はフランスに滞在し、フランス国立図書館(パリ)所蔵の国語教育関連資料を調査した。これらの調査は現在も継続中であるが、次年度以降に論文のかたちにまとめていくことを検討している。 いっぽうで、この研究課題における文学側の研究対象として中心的な位置を占める作家であるフローベールにまつわる個別的な調査分析を進め、論文として発表した。まず、初期作品のなかで作者の言語論的な意識がもっとも鮮明に現れた作品である『初稿 感情教育』を取り上げ、その文法的な革新性を顕著に示す手法である自由間接話法について詳細な分析を行い、上智大学フランス語フランス文学会紀要に発表した。また、そのような19世紀前半の文学制作が言語学(フランス語学)と濃密かつ持続的な関わりを保ってゆくさまを明確にする手段として、この文学的手法が言語学論文を通じて文学批評の世界に浸透してゆく歴史的な過程を叙述する論文を日本フランス語フランス文学会関東支部論集に発表した。 本研究によって蓄積されつつある過去のフランスにおける国語教育の実態は、今日のフランス語教育の現場を再考する際にも活かされるべきものと信じる。生涯学習におけるフランス語教育の新たな試みを叙述した放送大学研究年報の共著論文(四月発行予定)は本研究の将来的な発展の方向を示唆するものである。
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Research Products
(3 results)