2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10329
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
香西 豊子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ドネーション / 現代社会論 / 歴史社会学 / 医学史 / 生命倫理 / 科学技術社会論 / 身体論 |
Research Abstract |
ドネーション(人体の提供)にまつわる問題を歴史社会学的に捉えなおしてゆくという本課題の目的に照らし、三点にわたる研究計画を遂行した結果、以下のような知見を得た。 1、ドネーションという事象の存立に関して ドネーションという事象は、倫理観の衝突やシステムの自家撞着とみる以前に、「人体」の問題と捉えた方が、その存立様態を見取りやすい。試みに、提供され集積され活用される「人体」をつぶさに記述してゆくと、(1)「人体」という概念を支える技術的・制度的装置は、身体を対象化し、個々の身体間にある種の等価性をもちこむ、そのため(2)個人と身体との結びつきとは別の、身体間での結びつき、すなわち(ドネーションを語る際の基盤となる)「共有される人体」という想像力が作動する環境ができる、(3)ドネーションという事象が出来するのは、そこへ相応の言葉が付着するときからであり、(4)歴史的にみれば、それは極めて現代的な事象である、ということが見えてくる。 2、ドネーションを一般化する言葉に関して 上記1でふれたように、ドネーションという事象は、「共有される人体」という想像力が働くなかで身体が語られるときに現れるが、その際の言葉は、差し当たっては「人体」という概念とは隣接していなかったもの(習俗や規範など)である。現代においては、それがさまざまなかたち(「献体」・「献血」・臓器等の提供など)で「人体」と結びつき、さらにはドネーションを一般化する言葉をも生じさせている。 3、歴史社会学という手法に関して 「歴史」と「社会」という視野の取り方は、事象の通時的・共時的分析というのではなく、ともに広義の言説の分節に照準を合わせた、現代社会への問いの手法である。
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Research Products
(3 results)