2006 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア19世紀リアリズム文学におけるカフカス(コーカサス)植民地の表象
Project/Area Number |
05J10352
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
乗松 亨平 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ポストコロニアリズム / オリエンタリズム / ロシア文学 / 19世紀文学 / カフカス(コーカサス) / ロマン主義 / リアリズム |
Research Abstract |
(1)資料収集 2006年9月にフィンランド国立図書館で資料調査と収集を行い、1820〜30年代の雑誌『祖国雑記』などとともに、19世紀前半のカフカスに関する小説・旅行記類を、約50点複写することができた。 (2)文献読解 昨年度から今年度にかけて収集した資料のうち、文学については主要なものを読了した。19世紀前半のロシア文学における激しい変化を反映して、啓蒙主義的な教訓小説、ロマン主義的エキゾチシズムに基づく叙事詩や冒険小説、また社交界小説、さらにリアリズム初期のドキュメンタリー小説など、さまざまなジャンルの文学がカフカス表象の器となったことが確認できた。今後は、主要なカフカス旅行記・従軍記を読解することで、とりわけロマン主義からリアリズムへの変遷を跡づけたい。 (3)論文・学会発表 ロマン主義作家ベストゥージェフ=マルリンスキーのカフカス小説について、論文「ロシアは「曖昧」な帝国か?:ベストゥージェフ=マルリンスキイ『アマラト・ベク』を読む」(木村崇・鈴木董・篠野志郎・早坂眞人理編『カフカース:二つの文明が交差する境界』、彩流社)を発表した。マルリンスキーだけでなく、近年のロシア・オリエンタリズム研究の動向も概観し、現在の学者たちにも見られるロシア特殊論を批判した。また、口頭発表"Условия колониалъной репрезентации в русской литературе XIX века.(19世紀ロシア文学における植民地表象の諸条件)"(ロシア語、北海道大学スラブ研究センター冬期国際シンポジウム)を行った。昨年度より収集した資料の分析を元に、ロマン主義からリアリズムへのカフカス表象の変遷を、植民地を見る/知る/語る行為が文学テクストでどう表されているかに注目して追った。論文化して発表の予定。 また、ロマン主義とリアリズムをつなぐ最重要作家ゴーゴリの視覚的表象について、英語による口頭発表および論文発表を行った。
|
Research Products
(2 results)