2005 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア19世紀リアリズム文学におけるカフカス(コーカサス)植民地の表象
Project/Area Number |
05J10352
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
乗松 亨平 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポストコロニアリズム / オリエンタリズム / ロシア文学 / カフカス(コーカサス) / リアリズム / 文学と政治 / 文学と社会 |
Research Abstract |
1 資料収集 7月に北海道大学スラブ研究センターにて約1週間、9〜10月にモスクワのロシア国立図書館、サンクト・ペテルブルグのロシア国民図書館にて約10日ずつ、1830-60年代のカフカスに関する資料を収集した。北海道大学では雑誌『読書文庫』『帝立ロシア地理学協会紀要』『帝立ロシア地理学協会カフカス支部紀要』『海軍文集』のマイクロフィルムから、その全目次とめぼしい記事をコピーした。『読書文庫』については全期間(1834-65)の目次の分析を終え、2月に再度スラブ研究センターを訪れた際、チェックした記事をコピーした。モスクワ、ペテルブルグでは主に当時の単行本から、カフカスに関する文学作品や旅行記を約50点コピーした。現在、半数ほどを読了したが、雑誌記事と合わせ、詳細な分析は来年度の課題とする。 2 文学作品の分析 作家ベストゥージェフ=マルリンスキー(1797-1837)のカフカス小説に関し、論文「19世紀ロシア文学におけるリアリズムとコロニアリズム:ベストゥージェフ=マルリンスキーのカフカス・テクスト」(『「スラブ・ユーラシア学の構築」研究報告集No.10 19世紀ロシア文学という現在』、北海道大学スラブ研究センター、2005年)を発表した。また、19世紀前半のカフカス詩について、共同研究「スラブ・ユーラシアにおける東西文化の対話と対抗のパラダイム」(科学研究費基盤研究A)の冬季研究会(2006年2月18日、於北海道大学スラブ研究センター)にて、「植民地表象と形式の問題:19世紀ロシア詩のカフカス表象における見ることの変容」として発表を行った。これらのなかで明らかとなったのは、カフカス表象が流行した19世紀前半のロマン主義期から、より実証的なカフカス表象が求められるようになったリアリズム期への変遷を課題とする本研究にとって重要なのは、当時の文学作品が植民地の「差別的」イメージを流布したか否かといった議論よりも、そうしたイメージ生産を可能ならしめた諸条件の分析だということである。具体的には、ロマン主義期からリアリズム期にかけてのメディア環境やロシアとカフカスの関係の変化、また文学様式・ジャンルの変化など、イメージを独立してとりだすのではなく、それを枠づけている外縁に目を向ける必要がある。そのためにも、1で収集した雑誌記事や旅行記を有効に利用したい。
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Research Products
(1 results)