2006 Fiscal Year Annual Research Report
古代ローマ家族の研究:苦悩する家族関係と社会(Roman Dysfunctional Families)
Project/Area Number |
05J10353
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 絹子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 古代ローマ史 / 家族 / 死 / 悲しみ / グリーフケア / 喪 |
Research Abstract |
前半(4月から7月)にアウトリーチ活動の一環として、立教大学文学部において現在の研究テーマに関連した講義、セミナーを行い、研究成果の伝達に携わるとともに、より広い視点から研究テーマを俯瞰する機会を得た。また、7月から10月にかけて約三ヶ月間、イギリスに渡航し、関連する研究機関、図書館を訪れ、資料収集、研究動向の調査、諸研究者との意見交換に努めた。これらの活動をもとに、研究成果を国際的に発信することの有用性に鑑み、新たに英文で論文を一本執筆し、日本発の欧文学術誌へ投稿するに至る(現在査読中)。 論文の内容は、現代と比べて平均寿命が極端に短かったと考えられるローマ社会において、家族の死はどうとらえられ、その悲しみはいかなるものだったか、そしてその悲しみを癒すのに家族、親戚、友人、そして社会はどう対処したか、を論じたものである。すなわち、家族の死とそのグリーフケアという、一方で現代社会にまで通じる恒常的な人間問題の共通性と、他方で古代ローマという時代、社会、法律などにおける特殊性の両方を意識し、以下の三つの研究領域をふまえて考察した。それは、史料として主にconsolationes(「慰め」「お悔やみ」)という古代の書簡または論文(主に哲学的、文学的立場からの研究の対象)を用い、感情(現代の心理カウンセリングをふまえて)に焦点を当てた、社会史、特に家族史の立場での近親者の死という出来事である。そこには、半ば理想化された古い伝統の固守への衝動と、移り行く社会的道徳的価値観との葛藤が反映されていると考えられる。
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Research Products
(1 results)