2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10355
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱崎 加奈子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 香道 / 匂い / 聖徳太子信仰 / 比蘇寺 |
Research Abstract |
本年度は、主に香の伝来にかかわる記述を中心に、香道成立に関わる宗教的、思想的背景について考察を進めた。香は仏教と共に伝来したと言われているが、詳細な検討がなされてこなかった。私はこれまでも伝来の記述における重要な事項として、常世神信仰、薬の神スクナヒコナ、龍蛇神等との関係性を探ってきたが、今回新たに、聖徳太子信仰における香木伝来記述を検討することで、香道成立における思想的背景が見えてくるのではないかとの見地を得ることができた。太子信仰に関わる書は多岐に亘り興味深いものであるが、収集が思うようにはかどらず、研究は端緒についたばかりだが、今後の研究にとって大きな収穫をもたらすものと確信している。 また、これに関連して、最初に伝来した香木で作ったとされる吉野比蘇寺の仏像についての考察も進めている。同寺の縁起もまた、従来の縁起研究においてあまり評価されてこなかったものであるが、日本における仏像の最初ともいえる重大な出来事を含んでおり、ここに香が関わることは示唆的である。この縁起の系譜を辿りながら、「木」に対する人々の信仰について探ることで、古代から中世にかけての、「香る木」および「香る仏像」をめぐる人々の関心とそれによる宗教的効果について検討を進めており、現在、論考を準備中である。 なお、昨年より進めてきた香道関係史料の収集については、本年度はあまり進捗を得ることができなかった。
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