2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10364
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福永 美和子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ドイツ現代史 / 「過去の克服」 / ナチズム / ナチ犯罪追及 / ニュルンベルク裁判 / アウシュヴィッツ裁判 / 社会主義統一党(SED) / 国際刑事裁判所(ICC) |
Research Abstract |
本年度は、戦後ドイツの司法と「過去の克服」に関する内外の研究文献・資料の網羅的収集と解析を行うと同時に、5つの研究テーマのうち(1)ナチ犯罪の司法訴追の展開、(2)ナチ犯罪裁判と公的記憶の形成、(5)連合国裁判の受容とジェノサイドを予防する司法システムの構築、に重点的に取り組んだ。 (1)については、1.連合国の監督のもとで部分的なナチ犯罪追及が行われた占領期から1950年代初頭、2.旧ナチ勢力の恩赦と再統合が主潮流となり、ナチ犯罪訴追が後退した1950年代、3.司法取り組みの不足や欠陥が注目を浴び、ナチ犯罪訴追が活性化した1950年代末から1960年代以降の各時期における、ナチ不法の検証に関する司法政策、ナチ犯罪裁判の実施状況と傾向、その背景をなした政治的、社会的要因を分析した。 (2)については、アウシュヴィッツ裁判を中心に、ナチ犯罪訴追が公的記憶の形成に及ぼした作用を検討した。裁判が歴史的事実の究明にはたした貢献とその限界、新たに生み出された歪みや偏向、裁判に対するドイツ社会の様々な反応を検討し、裁判手続きを通じた過去の検証がもつ効果、特質及び問題点を考察した。 (5)については、1990年代以降にドイツが展開しているICC支援政策について、ナチズムの「過去の克服」との連関も考慮しつつ、ICC規程の策定、採択に関する国際的な政治過程でドイツが果たした役割、ICC創設をめぐる主要政党のコンセンサスとICC支援政策の形成要因、ICCに対応する国内法制化の実態と特徴を分析した。これについての研究成果は、日本学術振興会人文・社会科学振興プロジェクト「ジェノサイド研究の展開」の研究雑誌Comparative Genocide Studiesに発表する。(2006年6月刊行予定)
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Research Products
(1 results)