Research Abstract |
初年度におこなった病院外来での成人期口唇裂口蓋裂患者の面接からの知見をもとに,児童期前期中期,児童期後期,思春期,青年期後期の各発達期の心理社会的問題を明らかにし,さらにそれが各発達期の口唇列口蓋裂者の自己の中でどのような意味づけがなされているのかについて,モデルを構築する作業を行った。この結果,今後は児童期から青年期までの発達的支援を行う際に,一定の指針が出来たと考えられる。 今年度は初年度に構築したこのモデルをもとにして,T大学歯学部付属病院において,継続して児童期後期から思春期に移行する口唇裂口蓋裂児の面接を行って,支援モデルに基づいた実践を行った。この支援においては,単に病院外来において面接による支援を行うだけでなく,病院医師や他の心理学者,児童の両親,学校と緊密な連絡をとるリエゾンコンサルテーション的な支援を積極的に進めている。 また,口唇裂口蓋裂等,可視的変形を有している者は,他者・社会の反応に大きな影響を受ける。このため,顔の可視的変形に対する社会の側の理解促進が,支援の重要な側面である。この他者・社会への理解促進のために,9月には日本社会心理学会学会企画シンポジウムにて企画・発表を行って,多くの人々の理解に向けて討議を行った。さらに,2月には,この領域の先進的な研究・実践活動を行っているイギリスチャリティChanging Facesを訪問して世界の研究動向について知見を収集すると共に,当該領域の国際比較研究の可能性について活発な意見交換を行った。 実態調査及び支援モデルについては,論文にまとめられ学会誌(発達心理学研究,心理学研究)に投稿して現在審査中である。
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