2005 Fiscal Year Annual Research Report
インドにおける労働市場及び所得分布と移住意思決定・移住機能の経済分析
Project/Area Number |
05J10389
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 眞理子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 所得階層 / 家計特性 / 移住意思決定 / ジェンダー・バイアス / リスク分散 / 期待賃金 / 二部門モデル / インド |
Research Abstract |
従来の二部門モデルに基づく途上国の移住研究においては、地域間、おもに都市-農村間の賃金格差に基づく期待効用最適化に基づく期待賃金最大化モデルが非常に有用であった。しかし同時に途上国においては一般に経済、社会、天候等による固有の不確実性リスクが非常に高く、当該固有リスクへの補完機能たるフォーマルな制度(保険、金融等)が不備である例が多く、もしくはリスク補完機能が存在しても、制度に対するアクセシビリティの欠如が地域もしくは家計固有の特性により顕在化しており、リスクへの直面可能性が比較的高いレベルにある。ゆえに低所得家計にとっては、所得低下リスク分散機能の自律的な配備が要請されることとなり、移住による家計構成員の地域的分散に伴う所得移転はリスク軽減重要な機能を担うがゆえに、地域間人口移動は賃金最大化誘因動機よりもむしろリスク軽減動機が有用な説明変数たる場合も観察される。 研究対象地域たるインドにおいては女性の婚姻動機による移住が特徴的に観察されるが、女性の婚姻による人口移動は伝統的制度、因習的な社会的要因の強力な影響は否定できないものの、そのような女性移住は地域的リスク分散を通じた上述のようなリスク補完効果を有することが認められており、また、1991年の移住にかかわるセンサス・データを用いたクロス・セクション分析により期待賃金動機による移住は「相対的に高い所得にある低所得層」及び高所得層に集中して認められるという、所得階層による2極化的傾向が観察された、クロス・セクション分析では地域による人的資本指標は有用な変数ではなく、農村の所得水準が極めて高い変数となることが明らかになり、これに基づき、ジェンダー・バイアス及び所得バイアスに着目し、個表データ分析による家計の特性と移住機能及び移住動機の意思決定プロセスの解明を企図するものである。
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Research Products
(1 results)