2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代国家支配構造の研究-イデオロギー支配を中心に-
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05J10431
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有富 純也 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本古代史 / 国家論 / 九世紀 / 考古学 / 自然災害 / 不堪佃田 / 節会 / 律令給与制 |
Research Abstract |
平安時代における国家支配構造を検討するため、本年度は以下のような研究を主に行なった。 まず、「九世紀後期における地方社会の変転過程」を発表した。第一節では、帯剣・神社神階・地方陰陽師のあり方を検討することによって、貞観年間ころから坂東社会では争乱・混乱状態にあることを論じた。次に、九世紀坂東地域の状況は文献史料からでは判じえない面も多いため、第二節では考古学的資料も用い、坂東地域における集落の居住形態や、武器出土の増加傾向について述べた。このような変化は、他の地域においても同様で、混乱状況になるのは貞観年間ごろのようである。貞観期には、日本列島において自然災害が多く生じていたが、この自然災害により古代集落のあり方が変化した。しかし当時の朝廷は、このように変化した地方社会を統制することにさほど関心を示さなくなる。このような、自然災害に対する方策を講じない朝廷に対し、地方社会は国家に対抗する動きを示すと考えられる。 次に、「九・十世紀の不堪佃田と損田」を口頭報告した。これまでにおける不堪佃田に関する研究をふまえ、九世紀半ばから十世紀半ばにかけて、朝廷は不堪佃田・損田対策を講じることを論じた。さらに、不堪佃田・損田と密接な関係を持つ重陽節会を手がかりに、朝廷がそのような対策を講じる原因を、官僚給与制が次第に崩壊していくことを述べた。特に崩壊が確定的となるのは十世紀前半から半ばにかけてであり、律令官僚給与制の崩壊過程に関する再検討を行なった。
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Research Products
(2 results)