2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代支配構造の研究-イデオロギー支配を中心に-
Project/Area Number |
05J10431
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
有富 純也 The University of Tokyo, 史料編纂所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 日本古代史 / 国家論 / 災異 / 天皇 / 摂関期の国家 / 福祉政策 |
Research Abstract |
史学会大会において、「摂関期の災異と天皇」と題する報告を行った。一章では、寛仁元年・二年における災害時の朝廷の対応策について検討した。その結果、蝗害・疫病のとき朝廷は律令期と同様に全国に官符を発し、宗教政策を励行したが、雨乞いのとき、摂関期の朝廷が全国に官符を発するのは皆無で、山城・大和を中心とした地域のみに雨乞いを行った。二章では、天皇・貴族が災異の原因をどのように捉えていたか検討し、原因に「天皇の不徳」と末法思想があると考えていた。つまり災異が発生したとき、摂関期の朝廷は、ある局面において律令期同様の政策を行い、また律令期と同様の考え方で対処している。しかし別の局面において律令期と異なる政策を行っている。このような、一見矛盾したあり方は、摂関期における天皇・朝廷のあり方が重層的であることに起因していると最後に論じた。 次に、「律令国家の〈福祉〉政策」と題する論考を執筆した。これは、一般向け(高等学校教員など)に向けて、以前に執筆した論文「律令国家と百姓撫育」(以下前稿と称す)を発展・補足したものと位置づけることができる。すなわち一章では、百姓撫育の具体的国家政策を一つずつ解説し、具体的なあり方を論じた。さらに、前稿で儒教的な政策のみに注目したため、二章では仏教的政策にも注目し、天平年間の国分寺・東大寺大仏政策について論じた。続いて三章では、前稿では検討できなかった、古代国家が撫育を導入し始めた時期を検討し、推古朝の時期であることを論じた。
|
Research Products
(2 results)