2005 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール動的破壊モデルを用いた断層系の全成長過程と地震破壊過程の理論的研究
Project/Area Number |
05J10493
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 亮輔 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 断層 / 地震発生物理学 / マルチスケール / シミュレーション / 破壊エネルギー / 断層帯の物質科学 / 断層帯の幾何学的複雑性 / 階層構造 |
Research Abstract |
本年度は,初年度として,まず一回の地震イベント時に生じる断層形状の発展をモデルの解析によって調べた.本モデルでは,従来は無限に薄い平面としてモデル化されていた断層に,自然断層に見られる内部構造をマルチスケールモデルに基づいて考慮している.ここでは,基本的な主断層からの多数の分岐断層の形成過程と地震破壊との相互作用について調べた. 成果は次の通りである.1,高速伝播する破壊先端の応力集中が分岐断層を多数発生させ得ることが示された.2,分岐の動力学的状態の決定には,主断層の破壊伝播距離が重要であり,それがある臨界長よりも短いときは,分岐は安定であり主断層長に比例した長さ分布を持つ.3,一方,主断層長が臨界長を超えると,その後に生成する分岐断層は不安定になり,すなわち自発的に伝播し,その長さは主断層長とはほとんど無関係になる.4,自発伝播する分岐は断層系の複雑化に寄与することが分かった.この事は従来の研究では指摘されておらず画期的である.5,多数の分岐断層は主断層の破壊伝播を抑制する効果があり,自然地震での破壊伝播速度がS波速度の80%程度であることを説明する.8,この破壊抑制効果は,巨視的には破壊エネルギーの主断層長に比例した増加として現れ,この結果は,岩石実験と地震波解析で得られている経験則を説明する.これらの結果は,数値計算手法における成果とともに,英文誌に投稿準備中である. 本年度はまた,自然断層の発達過程を記録している,地形データの予備的解析も行った.データはすでに得られており,100m-100kmのダイナミックレンジを持ち,風化による地形の改変が少ないフィールドであり,本研究に適していることが分かっている.予備的解析の結果,ここには多数の正断層が存在しており,数桁の空間ケールで平行な断層のステップ構造とともに分岐構造が存在していることが分かった.
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