Research Abstract |
本年度は,1,自然断層の実測データの解析と,2,数値モデルの構築を二本柱に据えて研究を遂行した.以下,それぞれの項目について記す.1,本年度の研究では,断層の地表トレースから読み取られる断層形状の二次元的特徴の定量的評価を行った.これは,既往の研究が断層の長さという一次元的情報のみに終始していたことを乗り越え,大きく発展させられたことを意味する,本研究では,まず計算機を用いた画像解析アルゴリズムを開発した.解析アルゴリズムには,パターンマッチングの手法を応用し,断層セグメントの位置と長さ,及び角度の情報を抽出することを可能にした.さらに断層の分岐構造に着目し,分岐角とその断層スケール依存性を調査した.データは,米国カリフォルニア州全域においてカタログ化された,右横ずれ断層の地表トレースを用いた.このデータを用いた理由は,これらの断層面はその水平からの傾きがほぼ90°であることが分かっており,地表トレースが地下深部での断層形状にもほぼ等しいためである.その結果,分岐角度の分布はある値に明瞭なピークを持ち,そのピークは分岐構造のスケールにほとんど依存しないことが分かった.ここで得られた観測結果は,断層進化のモデルの拘束条件として重要である.2,数値モデルの構築として,本年度は,従来の我々の研究では考慮されていなかった,地震サイクルの効果を断層成長のモデル化に導入した.すなわち,一度の動的破壊時に生じる断層成長のみならず,地震の繰り返しという静的過程をも含めた,地質学的時間スケールでの断層の成長を考慮することを可能にしたのである.本年度は,まず,分岐断層の形成要因の一つとして推測されている,断層の屈曲部からの二次的断層の成長過程をモデル化した.その結果,地震の繰り返しにより屈曲部八の応力蓄積が生じ,それが確かに二次的断層,すなわち分岐を形成することが定量的に確かめられた.
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