2005 Fiscal Year Annual Research Report
インフレーション宇宙における密度揺らぎの進化と物質及び暗黒物質の起源
Project/Area Number |
05J10570
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 史宜 東京大学, 宇宙線研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | Q-ball / 暗黒物質 / ニュートリノ / 超対称性 |
Research Abstract |
本年度は、まず暗黒物質の有力候補のひとつであるQボールの安定性について解析的かつ数値的に調べた。Qボールは、超対称性標準理論における物質生成機構の一つであるアフレックダイン機構の中で自然に形成される。しかし、物質生成の為に必要なバリオン数を破るオペレーターがこのQボールの安定性を壊す可能性があった。そこで私と共同研究者は、このオペレーターの存在下で、Qボールがどのように振る舞うか解析的かつ数値的に調べ、Qボールの安定性の為にはオペレーターがある値以下でなければいけないという制限を得ることに成功した。また、銀河中心からの陽電子起源のガンマ線の量と分布に関する最近の観測結果によると、従来の天体では説明が難しいことが分かった。そこで私と共同研究者はある特定の平坦方向で形成されたQボールが、ガンマ線の量を自然に説明することを示した。宇宙の熱史はビッグバン元素合成以降はかなり明らかになっているが、それより以前についての理解は未だに乏しい。そのひとつの鍵となるのが宇宙の再加熱である。宇宙初期においてインフラトンが宇宙の指数関数的膨張を引き起こした後、再びその崩壊によって熱い宇宙が始まったと考えられている。それが非常に低い温度であった場合、ビッグバン元素合成に木きな影響を及ぼす。そこで我々は、再加熱温度が低い場合にニュートリノが十分熱化されないことに着目し、ニュートリノ振動を考慮しつつ、その元素合成に対する影響を調べ、再加熱温度に新しい下限を設定することに成功した。ニュートリノ振動を取り入れ、定性的な振る舞いの変化を指摘したのは我々が最初であり、非常に意義が大きい。
|
Research Products
(3 results)