2005 Fiscal Year Annual Research Report
半導体超格子中の電子波束運動とサブバンド間遷移によるテラヘルツ利得の解明と制御
Project/Area Number |
05J10614
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜沼 毅也 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | テラヘルツ / 超格子 / ブロッホ振動 / サブバンド間遷移 / シュタルク梯子 / 量子井戸 |
Research Abstract |
半導体超格子・量子井戸中のテラヘルツ利得に対する物理的理解とそれに基づいた制御を行うため,以下の研究を行った。 1.複数のGaAs/AlAs超格子を設計・作製し,フェムト秒レーザーパルスを用いたテラヘルツ時間分解分光法によってブロッホ振動電子からの電磁波放射波形を計測した。ブロッホ振動による利得が現れるには適度な散乱の強さが必要であり,それを制御することが重要である。本実験において,位相緩和時間の強い井戸幅依存性が初めて観測され,主要な散乱機構は界面ラフネス散乱であることが明らかになった。これは,超格子構造の工夫によって,位相緩和時間を幅広く制御できる可能性を示している。本成果については,第53回応用物理学関係連合講演会において発表予定であり,第28回半導体物理国際会議にも投稿中である。 2.量子井戸中のサブバンド構造や超格子中のミニバンド構造を直接的に評価するプローブとして重要な赤外吸収と電子ラマン散乱について,現れるピークの対応関係を初めて明らかにした。電子ラマン散乱においては,サブバンド間隔そのものに対応する一電子励起のピークが常に確認され,動的多体効果を含む集団励起のピークは井戸の対称性が悪い場合にのみ現れることが分かった。一方,赤外吸収においては,常に集団励起のピークのみが確認された。これは,構造評価に必要な情報を抽出する上で根幹をなす結果である。本成果については,日本物理学会第61回年次大会において発表予定であり,第28回半導体物理国際会議にも投稿中である。
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