2005 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染がミツバチの攻撃行動に及ぼす影響の分子神経学的解析
Project/Area Number |
05J10693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤幸 知子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミツバチ / ウイルス / 行動 / 感染経路 / ミツバチヘギイタダニ / 系統解析 |
Research Abstract |
(1)先行研究において、攻撃性の高いミツバチ(攻撃蜂)の脳から同定されたKakugoウイルス(KV)の感染分布をRT-PCR法で調べた結果、攻撃蜂のみからKVが検出される巣(コロニー)の他、攻撃蜂以外からも検出されるコロニーが見つかった。前者と後者のコロニーでKV量を比較すると、後者のコロニーでKV量が著しく高かったことから、(a)コロニーのKV感染初期に攻撃蜂のみがKVに感染し、何らかの要因でコロニー内にKV感染が拡大する可能性、(b)検出したウイルスがKVでなく近縁種のdeformed wing virus(DWV)であった可能性、が考えられた。まず(b)について検討するため、検出されたウイルスゲノムのRNA依存RNAポリメラーゼ領域の配列を決定し系統解析した結果、いずれも以前に決定したKVのゲノム配列とほぼ同一でDWVとは異なっていた。また検出されたウイルスのゲノム配列がコロニーごとに異なる傾向を見出した。したがって、KVとDWVは異なるウイルスであり、KVにはバリアントが存在することが示唆された。次に(a)の、KV感染の拡大に寄与する要因を検討するため、KV量の高いコロニーから見つかったミツバチヘギイタダニを調べた結果、KVが検出された。そのウイルスゲノム配列はミツバチ由来のKVと100%一致した。したがって、KVはミツバチヘギイタダニに媒介されることが示唆された。以上の結果から、KVの感染分布は状況によって異なり、感染初期のコロニーで攻撃蜂選択的に感染し、ミツバチヘギイタダニの媒介などによって攻撃蜂以外の蜂にも感染を拡大する可能性が考えられる。 (2)攻撃蜂とそれ以外の蜂の脳、またKV感染個体(感染3日後)や非感染個体の脳で、遺伝子やタンパク質の発現パターンを比較するためにマイクロアレイ法や二次元電気泳動を行った。その結果、いずれの条件でも脳における主要な遺伝子やタンパク質の発現パターンはほぼ同じだったが、KV感染個体の脳で発現量の高い遺伝子が1つ見つかった。この遺伝子の詳細な発現解析を現在進行中である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Kakugo virus from brains of aggressive worker honeybees.2005
Author(s)
Fujiyuki, T., Takeuchi, H., Ono, M., Ohka, S., Sasaki, T., Nomoto, A., Kubo, T.
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Journal Title
Advances in Virus Research 65
Pages: 1-27