2006 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染がミツバチの攻撃行動に及ぼす影響の分子神経学的解析
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05J10693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣内 知子 (藤幸 知子) 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミツバチ / ウイルス / 脳 |
Research Abstract |
(1)今年度からドイツ・ヴュルツブルグ大学との共同研究を開始した。初年度である今年度はKakugoウイルス(KV)の地理的分布の検討(a)やKV感染後のミツバチの行動変化の評価系の検討(b)を行なった。 (a)KVは欧米に存在するdeformed wing virus (DWV;ミツバチの羽変形病の原因ウイルスと推定される)と非常に近縁だが、日本で検出されるKVはいずれもDWVとは異なる系統に属する。一方、欧米におけるKVの存在は不明だったため、ヴュルツブルグ大学内の複数のミツバチコロニーについてKV感染の有無を調べた結果、DWVは検出されたがKVは検出されなかった。このことは、KVとDWVは地理的分布が異なり、KVは日本(あるいはアジア地区)に限定したウイルスであることを支持する。次にドイツで用いられているミツバチ(Am carnica;日本で用いているミツバチAm L.の亜種)でのKVの感染性を調べた結果、Am carnicaでもKV感染が成立した。これらの結果から、KVは様々なミツバチ亜種に感染しうるが、ミツバチが生息域を広げる過程で日本(あるいはアジア)に限局的に進化した可能性が考えられる。 (b)ヴュルツブルグ大学では近年、RFID タグ(Radio Frequency Identification)を用いたミツバチの行動評価系が開発された。これを本研究に応用可能か検討したが、RFIDタグの時間分解能や検出距離が低く、現時点では攻撃行動という俊敏な動きの解析には対応できないと考えられた。今後は別の行動評価系についても検討する必要がある。 (2)今年度の後半では、KV感染がミツバチの脳機能に与える影響を理解するために、KVの感染する脳領域を検討した。KV注射個体の脳を用いてin situハイブリダイゼーション(ISH)を行なった結果、感染後期(6日後)には脳全域にKVが感染することがわかった。次に、脳内におけるKVの感染拡大様式を調べるために、KV感染領域の経時変化を調べた。その結果、注射4日後からKVが脳の中心部(単眼のニューロン、キノコ体周辺部)に検出されはじめ、その後、視葉、キノコ体の細胞体、中心体などの様々な領域に感染することがわかった。また、天然に見つかった感染個体でも同様のKV感染パターンが観察された。したがって、KVは感染時期に応じて脳内の感染領域を拡大し、様々な脳機能に影響を与えると考えられる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Carbohydrate metabolism genes and pathways in insects : insights from the honey bee genome.2006
Author(s)
Kunieda T, Fujiyuki T, Kucharski R, Foret S, Ament SA, Toth AL, Ohashi K, Takeuchi H, Kamikouchi A, Kage E, Morioka M, Beye M, Kubo T, Robinson GE, Maleszka R.
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Journal Title
Insect Molecular Biology 15
Pages: 563-576
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