2008 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス感染がミツバチの攻撃行動に及ぼす分子神経学的解析
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05J10693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
垣内 知子 (藤幸 知子) The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミツバチ / ウイルス / 脳 / 免疫 |
Research Abstract |
攻撃性の高いミツバチの脳から同定された新規ウイルス(Kakugoウイルス;KV)がミツバチ脳に与える影響を理解するため、KV自然感染個体の脳で発現誘導される新規遺伝子として同定されたp26とKV感染との関係性を検討した。KV人為的接種個体の脳を用いてp26の発現量変動を検討した結果、p26はKVゲノムRNA(Kakugo RNA)量の増加に伴って発現上昇し、Kakugo RNA量が最大となる接種6日後に最大量となった。したがって、p26はKVゲノムRNA複製に伴って発現誘導されると考えられる。In situ hybridization法の結果、p26は自然感染個体・人為的感染個体ともに脳周辺部の細胞で強く発現していたことから、p26はKVの感染個体の脳辺縁部で発現誘導されると示唆された。脳辺縁部にはグリア細胞が多く存在することが知られているため、p26はグリア細胞で発現誘導される可能性がある。昆虫RNAウイルスの感染に伴う脳内での遺伝子発現変動を示したのは本研究が初めてである。 p26がコードするタンパク質は、N末端側に分泌シグナル、C末端側にはロンシンジッパ-モチーフ、中央部分にロンシンリッチリピート(LRR)様配列を含んでいた。後者2つは他の因子との相互作用に関わるため、P26は他の因子と相互作用する分泌性因子と示唆される。P26は細菌感染時に体液中に誘導されるとごく最近別グループから報告されたことと併せると、P26は免疫応答タンパク質であり、KV感染時にも脳辺縁部で誘導されて免疫応答に寄与する可能性が考えられる。免疫系がミツバチの行動に影響することは知られているが分子メカニズムについては報告がなく、本知見はウイルス感染-免疫応答-ミツバチ脳機能の関連を分子神経学的に解析する手がかりとなるものと考える。
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Research Products
(5 results)