2005 Fiscal Year Annual Research Report
セクロピア-アリ相利共生系における種間関係の維持・創出機構に関する生態学的研究
Project/Area Number |
05J10734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 香 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アリ植物 / オオバギ属 / 共生 / 種間関係 / アリ |
Research Abstract |
特定のアリ種に食物と巣場所を提供して共生関係を結び、そのアリに対食植者防衛を委ねているオオバギ属のアリ植物では、植物種に特殊化したアリ種のみと共生を行っていることが知られている。 これまでの調査で、同所的に生息するオオバギ3種は被食防衛戦略が異なっており、それが共生できるアリ種を限定していることが明らかとなった。では、1種のオオバギであっても、光条件などの環境が異なれば、防衛にまわせる投資に変異が生まれて被食防衛戦略も変化し、結果として共生できるアリ種も異なってくるのではないだろうか? 植物は一般に、光合成により生産された資源を、成長・繁殖・防衛などの多様なイベントに投資する必要がある。従って、アリ植物においても、アリへの投資量などが、光合成産物の限界に制約されていると考えられる。 そこで、まず、熱帯林から季節林まで分布するオオバギ種が存在するのかを調査した。その結果、オオバギ属の1種であるMacaranga bancanaがタイ国などの季節林まで分布していることが明らかになった。そこでこのアリ植物種を対象に、(1)共生するアリ種・(2)アリ防衛の強度・(3)植物が生産する餌の量・(4)オオバギの食害度について比較した。 その結果、熱帯林ではシリアゲアリ属が共生していたが、季節林ではオオアリ属の1種が共生していた。さらに、このアリ種は新種であることが明らかになった。また、このアリ種の攻撃性は、シリアゲアリ属よりは低いことが明らかになった。そして、アリへの餌の量は、季節林でより少ないことが示唆された。またオオバギはほとんど食害を受けていなかった。以上の結果から、光条件などの環境が異なれば、防衛にまわせる投資に変異が生まれて被食防衛戦略も変化し、結果として共生できるアリ種も異なってくるという仮説が支持された。
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