2006 Fiscal Year Annual Research Report
セクロピア-アリ相利共生系における種間関係の維持・創出機構に関する生態学的研究
Project/Area Number |
05J10734
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村瀬 香 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | アリ植物 / 種間関係 / 熱帯 / 被食防衛 |
Research Abstract |
世界中の熱帯地域とその周辺では、特殊なアリ種に巣場所と食物を与えるかわりに、そのアリに被食防衛を委ねている「アリ植物」と呼ばれる植物が多数報告されている。このアリ植物-アリ共生系には、なんらかの化学物質による相互作用系が進化していると考えられる。しかし、南米のCecropia-Azteca共生系においても、東南アジアのMacaranga-Crematogaster共生系においても、環境の変異性(例えば森林のタイプ)に関連させて、化学物質相互作用系を比較した研究はない。 そこで本年度は、まず、東南アジアのMacaranga-アリ共生系を材料に、化学物質の相互作用系を明らかにした。東南アジアの熱帯林に分布するアリ植物Macaranga数種と、タイ国などの季節林に分布するアリ植物Macaranga griffithianaを対象に、化学物質相互作用系の比較を行った。その結果、植物とアリの双方の体表炭化水素のパターンや、共生相手種への干渉の強度が、熱帯林と季節林のMacarangaでは全く異なるという結果が得られた。この結果は、現在論文として投稿中である。一方、南米のCecropia-アリ共生系においては、南米調査地域の治安が悪化していたことから長期の野外調査が出来ず、主に文献調査や博物館での調査を行った。 また、東南アジアから沖縄地域には、不特定のアリ類に食物を与えてそのアリに被食防衛を委ねている[非アリ植物」のMacarangaが広く生息する。植物の「アリ植物」への進化を考える上で、非アリ植物の生存戦略と、アリとの種間関係を調べることは不可欠である。そこで、Macaranga tanariusなど複数の非アリ植物種を調査した。その結果、非アリ植物種では、総じてアリへの投資量が低いこと、アリとの関係が予想以上にルーズなことなど、このタイプの種に共通する特性が明らかになった。これについては現在論文を準備中である。
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Research Products
(1 results)