2005 Fiscal Year Annual Research Report
IL-1受容体アンタゴニストノックアウトマウスにおける睡眠障害に関する解析
Project/Area Number |
05J10785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 千里 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | IL-1 / IL-1受容体アンタゴニスト / 行動異常 / 不安・鬱 |
Research Abstract |
IL-1は炎症反応において重要な役割を果たしていることはよく知られていたが、ストレスが負荷された際にも脳内でmRNAレベルでの発現が上昇することが報告されるようになり、炎症時以外でも神経系において何らかの働きを担っていることが示唆されている。当研究室ではすでに、IL-1の受容体アンタゴニストを人為的に欠損させたIL-1受容体アンタゴニストノックアウトマウスが作製されており、IL-1シグナルが恒常的にIL-1受容体に伝達されていると考えられている。このマウスを用いて、神経系に対するIL-1の役割を解析するために、さまざまな行動試験を行った。その結果、8週齢においては、野生型マウスに比べて、ノックアウトマウスおよびヘテロマウスでは強制水泳試験やtail suspension試験などにおいで、いずれも有意に不動時間が少ない傾向にあった。このことは、マウスがその状況から逃れたいという逃避行動が野生型より強い傾向にあることを示唆するものである。一方、その他の行動試験(高架式十字迷路、明暗箱移動)においては、野生型マウスに比べ、ノックアウトマウスではほとんど差がみられなかったのに対し、ヘテロマウスで不安とは逆の傾向(躁状態)を有意に示すことが明らかとなった。以上の解析結果をまとめると、IL-1受容体アンタゴニストのタンパク量が野生型より減少すると、逃避行動が増大し、さらに、減少した際のタンパク量の発現の違いにより、躁状態に傾くかどうかを決定しているということが示唆する結果となった。このことから、IL-1受容体アンタゴニストによるIL-1のシグナル量の調節が、精神疾患の発症において重要な役割を担っている可能性があり、疾病発症のメカニズムの解明につながることに期待が持てる。 現在、このIL-1受容体アンタゴニストノックアウトマウスが高齢になった場合(20週齢)に、行動異常がどのように変化するのか、解析中である。
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