2008 Fiscal Year Annual Research Report
IL-1受容体アンタゴニストノックアウトマウスにおける睡眠障害に関する解析
Project/Area Number |
05J10785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若林 千里 The University of Tokyo, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | IL-1 / うつ様行動 / ストレス / IL-1受容体アンタゴニストノックアウトマウス / 交感神経 |
Research Abstract |
IL-1受容体アンタゴニストノックアウト(IL-1raKO)マウスを用いて、IL-1の過剰シグナルによって誘導される行動異常(うつ・不安など)発症の詳細なメカニズムについて、解析を行ってきた。IL-1ra KOマウスは通常飼育状態では同腹野生型マウスに比べ「抗うつ様行動」を示すことを観察していた。この現象は、アドレナリン受容体拮抗薬投与により改善されることから、交感神経系の過剰な活性化によるものであることが証明できた。一方、この抗うつ様行動は、軽度の慢性拘束ストレスによりうつ様行動および不安様行動を示すようになることを見いだした。すなわち、IL-1のシグナルが入りやすい状況にあるIL-1ra KOマウスでは、野生型マウスとストレス感受性が異なることを発見した。このストレス感受性の違いを利用して、IL-1raKOマウスの行動異常がどのようなメカニズムで誘導されているかについて、特に、アドレナリン受容体の発現に関して、海馬と大脳皮質におけるmRNAの発現レベルをリアルタイムPCRで比較した。その結果、ストレスを負荷したIL-1raKOマウスの海馬においては、アドレナリン受容体alpha2bの発現が、ストレス負荷なしのIL-1raKOマウスよりも有意に減少していることがわかった。またGABAA受容体サブユニットに関しては増加している傾向にあった。いっぽう、大脳皮質においてはアドレナリンalphala,2aおよび5-HT2Creceptorの発現が減少していることが確認できた。 以上のことから、アドレナリン受容体シグナルを介したcAMP活性化等がストレス負荷により変化をうけていること、GABAA受容体シグナルやセロトニンシグナルに関してもバランスが崩れ、ノルアドレナリンの放出や交感神経系シグナルの質に変化が生じた結果、うつや不安様行動が誘導されていることを示唆する結果が得られ、うつや不安の発症メカニズムの要因となっていると思われる。
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Research Products
(1 results)