2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10837
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 敏哉 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 共有 / 特許権 / 著作権 / 準共有 / 分割請求権 / 持分に応じた使用 |
Research Abstract |
予定通り日本法の歴史研究を行った後、比較法研究については若干計画を変更し、英国・米国・ドイツ法における所有権・特許権・著作権の共有を巡る規律の概括的な把握を通じて、基本的な分析枠組を構築した。歴史研究からは、共有特許権の規律を定めた大正10年法が大審院判例の趣旨からは創設規定と解され、またその規定が反対論を意識しながら政策的に導入されたものであり、無体物の特性から当然に導かれるものではないことが明らかになった。比較法研究からは、英米独の各国において、共有所有権の規律が持分割合に応じた果実・収益の分配という点では共通するのに対し、共有特許権と共有著作権の規律にそれぞれ差異があることが明らかとなった。特に英国法は、日本法と同様の共有特許権の規律が19世紀の判例により確立された点で、母法とも評価できる重要性を有する。 今後は各国法でこれらの規律が形成された政策的・理論的根拠、その評価の分析を行い、共有者間の(特に持分割合に応じた)公平、情報財の利用・創作の促進、意に反する利用を拒む人格的利益の保護といった、複雑に絡み合う各要素が知的財産権の共有の規律にどう影響するか(逆に共有の規律がこれらの要素にどういう影響を及ぼすか)を検討する。日本法の解釈論・立法論については、分割請求権の位置づけ、持分割合に応じた実施料の支払いの要否が重要な論点となろう。 また文化審議会著作権分科会法制問題小委員会契約利用WTの一員として、著作物の利用契約を巡る立法論的検討に加わった。このWTでは共有自体は扱われなかったが、一つの著作物に複数の権利主体がいる局面として共有と利用許諾・一部譲渡とを対比する分析の前提作業となった。
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