2005 Fiscal Year Annual Research Report
近代欧州の政治家・外交官の国際政治観と欧州国際政治の性質との相互関係を解明する。
Project/Area Number |
05J10838
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川合 賢 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 西欧史 / 外交史・国際関係史 / 国際理論 / 国際情報交換 / ドイツ:オーストリア:イギリス |
Research Abstract |
1853年〜1860年を対象にプロイセンの保守派政治家の国際政治観を調査し、以下のような知見が得られた。 1.勢力均衡という単語がIRの教科書的な意味で使用されている文書は極めて少ない 2.保守派政治家の間では、1814/5年のウィーン会議によって成立した欧州国際秩序を勢力均衡システムというよりも集団安全保障システムに近いものとして認識するのが一般的のようである。彼らの多くがそのようなシステムに適合的な対外政策方針を主張し、そのシステムの存在が結局のところプロイセンの安全保障に貢献すると考えていた。Realpolitik的な対外政策方針を主張するのはBismarckという重要な例外を除いて管見の限り見あたらなかった。それゆえ、プロイセンが1850年代にRealpolitikを受容したとする主張は支持しがたい。 3.保守派政治家のウィーン体制観は、現代の歴史学者・国際政治学者のウィーン体制観と似ており、その意味で保守派政治家が国際情勢の大まかな把握に失敗していたとは言い難い。また、彼らの主張する対外政策方針は、集団安全保障システムに近い欧州国際秩序の維持・再建という目標と論理的に整合しているものであった。彼らの対外政策案を感情やイデオロギーによって歪曲された非合理的なものであるとする一般的評価は支持できない。 プロイセンの政治家の国際政治観にイギリスの政治家の国際政治観が影響しているのではないかという仮説を検証するための予備作業として、19世紀の人道的介入の是非を巡るイギリス議会での討論を対象にイギリス人政治家の国際政治観を調査し、以下の知見を得た。 1.勢力均衡政策とは一致しない、倫理・法・正義を最上位に据えた主張が多数存在 2.被介入国の将来に対する期待が強いほど介入に反対する傾向がある
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