2006 Fiscal Year Annual Research Report
近代欧州の政治家・外交官の国際政治観と欧州国際政治の性質との相互関係を解明する。
Project/Area Number |
05J10838
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川合 賢 東京大学, 大学院法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 西欧史 / 外交史・国際関係史 / ドイツ / 国際理論 |
Research Abstract |
プロイセンの保守主義者が1850年代のヨーロッパ外交をいかなる視座構造で把握していたかを一次史料を利用して調査し、以下のような知見を得た。 強硬保守派:一般構戒員においては、国家の生存/自律性といった外交上の価値を革命圧殺/身分制的国家という内政上の価値に従属させる傾向が強く、国際政治が諸列強の利益闘争の場ではなく、自由主義/保守主義のイデオロギー闘争の場として把握される。しかし、指導的メンバーにおいては国際政治上の価値がヨリ重視されている。先行研究では強硬保守派の親ロシア的傾向が国内体制の類似性に起因するとされているが、このグループの指導的政治家においては、仏露接近とそれが招来する普の破綻を防止するという国際政治上の考慮が親ロシア路線を導いている。彼らの国際政治認識において歴史認識が重要な役割を果たしている。権力政治的な個別利害の重視がフランス大革命やナポレオンに対する勝利を困難にせしめたと理解し、フリードリヒ大王的な国家理性の追求や勢力均衡は最終的に破滅をもたらすとされる。権力政治の果てにあるのが1807年の仏露による大陸分割であり、それを克服するためにキリスト教普遍的な価値や保守主義的連帯の重要性が強調されることになる。 穏健保守派:内政の優位の観点から彼らの外交論を自由主義的傾向政策とみなしたり、利益政策の標語からRealpolitikとの共通性を指摘する見解があるが支持しがたい。彼らの外交論は対外的自立という外交上の価値に立脚している。内政における立憲主義の唱導はドイツ政策における道徳的征服路線の必要条件と認識されており、彼らの目標設定において外政の優位の特徴がヨリ色濃く表れている。しかし、一方で彼らの対外政策論はRealpolitikとは異なるものであった。利害政策を掲げて個別利害の追求を強調するにもかかわらず、国際政治がロック的自然状態として把握され、国際法の遵守と個別利害の追求との関係が親和的に理解されていた。
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Research Products
(1 results)