2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10844
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中澤 俊輔 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 警察 / 政党政治 / 第一次大戦 / 思想 / 選挙 / 民主化 / 自治体 / 後藤新平 |
Research Abstract |
研究計画一年目として、公文書を中心に、1920年代の私文書、議会議事録、雑誌・新聞等の調査を行った。 第一次大戦後、国内外の動揺を受けて思想問題が治安上の課題とされた。政友会が外来思想の流入を警戒し、憲政会が政権交代と社会政策による解決を掲げたように、問題は政党間の政策競争の一角を担った。一応の収束として1925年に治安維持法が成立するものの、1926年の朴烈事件は政局を動揺させ、天皇・宮中の警衛も問題とされた。 また、1920年代の民主的風潮の高揚に対して、警察も順応を迫られた。例として、社会との融和を図る警察の「民衆化」、地域住民の自衛活動の奨励が挙げられる。こうした政策は治安機能を社会へ拡散させる可能性を孕んでおり、その弊害は関東大震災での自警団の暴行によって露呈した。 一方、この時期には警察権を自治体に移管する気運も高まった。すなわち、欧米の自治体警察制度が注目され、大都市に警察権を移管する特別市制が検討された。また、田中義一内閣では特別高等警察の強化とともに、知事公選による警察の地方分権化が議論された。 反面、政党政治期には政党による政権の恣意化、「党弊」が問題となった。「党弊」は警察人事や選挙・疑獄事件の取締で顕著となり、是正策として検事直属の司法警察官設置、警察官の身分保障が挙げられた。民政党内閣はこれらを採択し、「党弊」の自浄に努めている。 以上、1920年代の社会変動と政治的民主化を背景として、思想問題と選挙取締は重要な争点となり、政党政治の弊害を是正する観点から司法警察の独立も検討された。一方、政党政治は警察の民主化を促すとともに、その中立化を図る自浄作用的側面をも有していた。 なお、第一次大戦後の政治的民主化の準備期間となる、日露戦後の警察と政党政治について論文を発表した。また、政党政治と対極をなす官僚政治家・後藤新平の研究プロジェクトに参加し、論考を発表した。
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Research Products
(2 results)