2006 Fiscal Year Annual Research Report
網膜視細胞に対するフィードバック制御機構の神経科学的究明
Project/Area Number |
05J10863
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒井 格 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 網膜 / 双極細胞 / 神経科学 / 神経伝達物質 / 誘発性シナプス後電流 / アマクリン細胞 / 光応答 / 電気シナプス |
Research Abstract |
網膜双極細胞は光受容器である視細胞から入力を受け、大脳皮質視覚野に出力する神経節細胞へ情報を伝える介在神経細胞であり、網膜での視覚情報処理において重要な役割を担っている。 我々はこれまでに、双極細胞が神経伝達物質を放出する様式には2種類あることを明らかにしてきた。即ち、軸索終末部に存在するシナプスリボン直下で起きる一過性の放出と、シナプスリボンが存在しない場所で起きる持続的な放出である。本年度は、双極細胞における2種類の伝達物質放出様式が果たす機能的意義を研究した。キンギョ網膜からスライス標本を作製し、Mbl型双極細胞やシナプス後細胞であるアマクリン細胞にホールセルパッチクランプ法を適用し、膜電流を記録した。 2つの双極細胞から同時記録を行ったところ、両者の間に電気シナプスが存在することが明らかになった。この電気的結合はギャップ結合の阻害剤によって切断できた。2細胞間の距離が100μm程度離れていても電気シナプスを介した電流が記録できたことから、Mb1型双極細胞は広範囲にわたって電気的に結合していることが示唆された。 双極細胞とアマクリン細胞から同時記録を行い、双極細胞に脱分極パルスを与えると、アマクリン細胞から誘発性の興奮性シナプス後電流が記録された。誘発性応答には数十秒という非常に長い脱分極パルスに対して持続するものも観察された。このような非常に長い持続応答は、双極細胞のもつ2種類の伝達物質放出様式のうち持続的放出が関与している可能性が考えられる。しかし、本年度新たに見出した双極細胞聞の電気シナプスを介して多数の双極細胞が興奮し、それらの入力によって持続的な応答が発生していた可能性も考えられる。今後、誘発性シナプス後電流がMb1型双極細胞の伝達物質放出様式とどのような関係があるのか、またその際、Mb1型双極細胞間の電気シナプスが及ぼす影響について検討していく予定である。
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