2005 Fiscal Year Annual Research Report
市民による公共的意思形成・意思決定手法の類型化にもとづく規範的研究
Project/Area Number |
05J10872
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齊藤 康則 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 市民参加 / パートナーシップ関係 / 都市-地方間格差 / 存続の論理 / 生活(圏)の危機 / 公共性 / コミューナルな仕組み |
Research Abstract |
本研究の目的は、地方自治体の計画策定過程における市民参加に焦点を当てて、コミュニティ組織・住民運動団体・市民活動グループが相互にいかなる関係を保ちながら、行政官僚機構とのパートナーシップ関係を構築しつつあるのかを探究することにある。具体的に言えば、多岐にわたる自治体計画の中でも本研究が着目するのは、鉄道事業法・道路運送法の改正により事業者の不採算路線からの自由な撤退が法的に容認された結果、今日ますます都市-地方間格差を生み出しつつある地域交通施策をめぐる市民参加である。 本研究は2005年3月末に廃線となった日立電鉄線(茨城県・日立市〜常陸太田市)を事例として、約1年半にわたる高校生と沿線住民の運動展開過程について、(1)日立電鉄の廃線方針発表と「日立電鉄線の維持存続をもとめる高校生徒会連絡会」の結成、(2)「日立電鉄線を存続させる市民フォーラム」の発足と国土交通省の廃線容認、(3)常陸太田市の存続断念と運動の持続と変容、と期を劃しながら分析をおこなった。 本研究が明らかにしたのは、採算性・安全性を求める事業者・受益と負担の公平性を求める自治体に対抗して、高校生と沿線住民が存続運動を通して構築した<存続の論理>--事業者・自治体の領域縮小により「生活(圏)の危機」に直面する年少者や高齢者の生活を支えるため、新たな社会的事業の可能性を射程に入れた--である。このような<存続の論理>は廃線後、マス的公共交通(鉄道・バス)と個別的私的交通(自家用車)の中間形態である「コミュニティ交通システム」の構築により、「買物・通院の足」の充実をも目指した点に触れながら、ただちに公共性(自治体による制度的対応)へと組み込むことのできない生活要求をコミューナルな仕組みにより支えようとする住民活動への変容を指摘した。
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