2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J10877
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 隆美 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 文学研究 / プルースト / 建築 / 音楽 / フランス / 信念 |
Research Abstract |
論文「プルーストにおける鐘塔のイメージ」において、プルーストにおける建築と音楽のイメージの関わりを考える際に、特に鐘塔とういイメージが重要なイメージになっていることを示した。『失われた時を求めて』では、このイメージは、プルースト特有の「信じる」という契機、すなわち芸術的真理や美の存在に対する信仰を中心とする「信じる」という契機を象徴している。このことは、「コンブレー」における鐘塔のイメージと読書の関わりの分析を通じ明らかになった。そして天職のテーマを暗示し、芸術家の誕生を予告する重要な場面、マルタンヴィルの鐘塔のロンドの描写を、プルースト的「信じる」という契機との関わりで読み解く可能性を示唆した。すなわち、鐘塔の激しい運動と、何かを信じ、その信じたことが時間変化し、消失し、再び見出されるという主人公の精神の遍歴との間に、一つの対称関係が読み取れることを示した。またこの鐘塔のイメージは、「花咲く乙女たちの影で」におけるエルスチールの絵画の中に現われ、建築芸術と絵画の間に一つの芸術照応を成立させる媒体としても機能していることを明らかにした。 また、鐘塔のイメージは建築の一部であり、かつそこから鐘の音が響く、ということから、音楽のテーマとも密接に結びつくイメージとなっている。というのも鐘の音というのはプルーストにあって非常に音楽的な要素を含み持つものだからである。そこで鐘塔、あるいは鐘の音といったイメージに注目すると、そのイメージを通して、建築芸術と音楽芸術との間にプルースト独自の照応関係が設定されているということが分かってきた。
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Research Products
(1 results)