2005 Fiscal Year Annual Research Report
紀元後1世紀の修辞学と歴史書や叙事詩を中心としたラテン文学との関係について
Project/Area Number |
05J10897
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 俊一郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 西洋古典学 / 修辞学 / ラテン文学 |
Research Abstract |
この研究は、ローマ帝政期の修辞学と文学の関係を、議会で行われる弁論を主な対象として、明らかにすることを試みるものである。この時代の修辞学は、相手を説得するための弁論を作り出すという本来の役割を離れ、文学を書く方法論としての機能を帯びるに至った。一方、歴史や詩を書く者は修辞学によって教育されていたため、これらの文学作品の中にはそれの大きな影響が見られる。この研究では歴史書や詩の中に現れる弁論を対象とすることで、一つの視点から両者のこの時代の関係を総合的に記述する。とりわけ、歴史書の中で重要な役割を果たしている議会弁論を主要な対象とする。この分野は既に実用的な価値が薄れていたため、修辞学と文学との関係をより明確に表現しているからである。本年の研究ではまず、この時代の修辞学理論の代表的著者であるクィンティリアーヌスの審議弁論に関する理論について、これまでに行なってきた研究を総括した。つづいて、紀元後一世紀の歴史書に含まれる弁論の中の修辞学の役割を研究し、その概要について見通しを得ることを目標に、この時代の歴史家であるウェレイユス・パテルクルスやクィントゥス・クルティウスの著作について、修辞学の影響を指摘できる箇所の分析を行なった。その際には、そこにみられる特徴を、先行するリーウィウスやサルスティウスや後に続くタキトゥスと比較し、ラテン語の歴史書の伝統という大きな文脈と関連付けることや、加えて、先行するギリシャの歴史書や、同時代のギリシャ語の著作との関係も検討されている。
|
Research Products
(1 results)