2005 Fiscal Year Annual Research Report
対人関係における面子の役割についての文化心理学研究
Project/Area Number |
05J10898
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 純姫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 面子 / 文化心理学 / 対人関係 |
Research Abstract |
面子は対人関係に深く関わっているにもかかわらず、先行研究の欠如により、日本文化の「面子」概念の定義や面子が日本人の心理・社会的行動に及ぼす影響などに関してはいまだに明らかにされていない。そこで、本研究は文化心理学的なアプローチに基づき、日本人の面子概念及びその心理的・社会的応用を明らかにしようとしている。 本研究はまず、「面子」が一般的にどのように認知されているかを調べた上、日本文化における「面子」の概念化を試みた。その結果、日本人にとって面子とは「個人の社会的役割に関わっている公的自己イメージ」のことであると定義することができた。そして、公の場において個人の社会的役割の達成の成否が面子維持・喪失を規定することも明らかになった。 さらに個人の面子に対する認知に影響を与える要因を調べるために、本研究は3つの質問紙実験を行った結果、状況要因として、「場面の公式性(formality)」、対人要因として、「相手との関わりの程度」及び「相対的上下・地位関係」が面子喪失の認知に影響を及ぼすことがわかった。つまり、公式な場面において、個人が自分の社会的役割に関わる活動に失敗したら面子がつぶれると見なされるのに対して、個人的な場面においては上述の傾向が見られなかった。また、関わりのある人間(例えば友人・知人)や自分よりも目下の人間の前で、社会的役割に関する活動に失敗した場合のほうがより面子がつぶれると見なされることも分かった。 最後に、日常生活における面子経験が個人の精神に及ぼす影響を検証するために、質問紙実験を行った。被験者に今まで一番印象に残る面子の出来事の詳細および当時の心境などを尋ねた結果、面子経験が一般的にネガティブな気分をもたらすことがわかった。つまり、面子というのは、保たれている状態が普通な状態であるため、面子に関る出来事の発生自体が面子への脅威となり不快感を与えるのではないかと考えられる。
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Research Products
(1 results)