2006 Fiscal Year Annual Research Report
議会における交渉の諸形態の比較検討および連立政権形成との関係の研究
Project/Area Number |
05J10904
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川森 智彦 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 議会における交渉 / 提携形成交渉 / 全体提携 / 提案者の選択過程 |
Research Abstract |
議会における交渉(legislative bargaining)より一般的な交渉の枠組みである提携形成交渉(coalitional bargaining)について,その交渉の形態が効率性(全プレイヤーが協力して1つの提携を形成すること)に与える影響を分析した.提携形成交渉においては,提案を提示するプレイヤー(提案者)がどのように選ばれるかが,交渉の結果に影響すると考えられる.そこで,提案者の選ばれ方の交渉結果への影響を分析した.提案者の選ばれ方の主要な形態として,次の2つがある.1つは,前回の交渉ラウンドで提案を拒否したプレイヤーが,今ラウンドで提案者になるというものである.いま1つは,各ラウンドにおいて提案者が無作為に選ばれるというものである.本研究では,こうした2つの形態を特殊ケースとして含む一般的なモデル(展開形ゲーム)を構築した.具体的には,今ラウンドでの提案者が選ばれる確率が,前ラウンドで提案を拒否したプレイヤーが誰であるかに依存して与えられているというモデルを分析した.このモデルにおいて,全プレイヤーが協力して1つの提携(全体提携)を形成する均衡(定常部分ゲーム完全均衡)が存在するための必要十分条件を導いた.この必要十分条件から,(ある条件の下では,)前ラウンドで提案を拒否したプレイヤーが今ラウンドで提案者になる確率が低いほど,全員が提携を結ぶ均衡が存在しやすいことが示された.一方で,各プレイヤーが十分に我慢強い時には(すなわち,割引因子が1に近づく極限においては),(ある条件の下では,)前ラウンドで提案を拒否したプレイヤーが今ラウンドで提案者になる確率の大きさは,全体提携が形成される均衡の存在のしやすさに影響しないことが示された.
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