2005 Fiscal Year Annual Research Report
歴史依存性のある契約理論・ゲーム理論モデルの理論分析
Project/Area Number |
05J10910
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾川 僚 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 経済学 / ゲーム理論 / 契約理論 / マーケットデザイン |
Research Abstract |
契約理論の諸モデルにおいて歴史依存性がもたらす性質の変化を明らかにするという本研究の目的にかんがみ、本年度は、モラル・ハザードと呼ばれる不完備情報下の代表的な基本モデルにおける歴史依存性のもたらす役割を深く研究した。特定の条件のもとで契約が簡単な形で書かれ、モデルの結果と現実経済との対応関係も強いことが前年度までの私の研究によって部分的に明らかになっていたが、本年度は、その前提となる経済環境の条件がどのようなものであるか幅広く分析をした。特に、長期間のモデルにおける条件の導出は複雑な作業となったが、研究計画であげたとおり高度な計算処理能力をもつコンピュータおよび科学技術計算ソフトウェアをこの作業に援用し成果をあげることが出来た。また、米国の研究者が独立した研究により簡易なモデルで類似の結果を得ているが、相互の結果および条件を比較検討することにより、私のモデル・結果がより一般的であり、汎用性にすぐれ、また条件も証明の中核となっていることを明らかにした。これらの成果はすでに論文としてまとめられ、近日中に英文雑誌において査読される予定である。 また、花卉市場のセリ制度における欧州と日本との相違点の理論的な分析をおこなった。セリ制度は逆選択と呼ばれる不完備情報下の代表的な基本モデルの特殊ケースとしてとらえることができ、多数単位の財をくり返しセリにかける花卉市場のセリ制度の分析は、動学的な状況を考察対象とする本研究の重要な柱となるものである。マーケットデザイン等の応用をめざすという研究目的にも合致するものである。
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