2005 Fiscal Year Annual Research Report
市場構造がもたらす性質に関するオークション理論を用いた分析
Project/Area Number |
05J10911
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
北原 稔 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 情報獲得費用 / 多数決投票 / 花卉オークション / マリ中 |
Research Abstract |
1.(多数決)投票において、投票者が正の情報量を得るためには費用がかかるような場合、投票に参加する人数が増える(従って個々の投票者にとっては自分の得た情報が結果に反映される可能性はゼロに近付いて行く)につれて、投票の結果正しい選択肢が選ばれる確率がどのような値に収束して行くか、その値と費用関数の形状との関係を探った。受け取る可能性があるシグナル(費用をかけるほどシグナルの精度が上がる)が二つのみで、かつ、どの投票者も同一の費用関数を持つような場合については、他の研究者による先行研究が存在していた。本研究により、正規ノイズが入ったシグナル(従って実数のどの値も受け取る可能性がある)などのより豊かなシグナル構造の場合についても一般にシグナルが二つの場合に還元できること及びその還元の仕方、また、投票者によって費用関数が異なることを許した場合の費用関数の分布と確率の収束先との関係が、新たに明らかになった。以上の成果は、関口洋平氏(東京大学博士課程)との論文にまとめられ、英文査読誌に投稿中である。 2.東京大田市場を初め、日本の主な花卉オークションでは、通常のオランダ式のものに「マリ中」という独自の手順が追加されている。この手順の追加がオークションのパフォーマンスをどのように変えるのか、計算可能なモデルを構築し、現実的と考えられる販売個数、買い手数の範囲で数値計算を行い、評価を試みた。理論からすぐに予測されるこの手順の問題点は、必ずしもより高い評価額の買い手に花が渡らなくなることである。しかし、数値計算の結果、そのことから生じる損失は僅かなものに過ぎず、一方でその僅かな損失と引換に、オークションにかかる時間が大幅に短縮される可能性があることが、明らかになった。以上の成果については、尾川僚氏(東京大学博士課程)との論文にまとめ、日本経済学会2006年度秋季大会で報告する予定でいる。
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