2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヴァルター・ベンヤミンの「瞬間の歴史哲学」の構築:超越論哲学の徹底化とその帰趨
Project/Area Number |
05J10946
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 一浩 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ベンヤミン / 言語 / 認識論 / 歴史哲学 / 超越論哲学 / 瞬間(時間) / 経験 / 言葉(文字) |
Research Abstract |
本研究は、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンの言語哲学的な認識論に基づく歴史概念を、超越論哲学の徹底化の帰趨として再構築しようとするものである。本年度(平成十七年度)には、二年間の課題採択期間の初年度として、ベンヤミンのテクスト(書簡、未発表メモ、草稿の類を含む)の読解とともに、先行する研究論文・研究書の収集および検討が進められた。その成果は以下の二本の論文に定着された。 『tend-』(『超域文化科学紀要』第10号、2005年、所収)では、ベンヤミンの後期テクスト『技術的な複製可能性の時代における芸術作品』を読解、分析した。『芸術作品』の根本問題は、メディア論の先駆としてもてはやされるその論述内容よりも、むしろその論述の対象が認識可能となる時間、つまり認識の対象に触れようとする<瞬間>にある。この点が、ラテン語の動詞「tendere」に由来するドイツ語句(Tendenz, Intention, Intensitat)と、「掴む」という意味のドイツ語動詞「greifen」に由来するドイツ語句(Griff, Begriff, Inbegriff)の、潜在的な有機的連関を再構築するなかで論証された。 『経験の零点』(『哲学・科学史論叢』第8号、2006年、所収)では、ベンヤミンの初期テクスト『来たるべき哲学のプログラム』を読解、分析した。『プログラム』の根本モティーフは、カントの超越論哲学を徹底化することにある。その果てに、<経験>と呼ばれるものの内容が徹底的に縮減されたゼロ地点が、経験の時間的連続性が宙づりにされるゼロ時点として、すなわち<瞬間>として見出される。この点が、「来たるべき」という言葉が指し示している時間構造と、ベンヤミンがカントの「途方もない仕事」の場と呼んでいる「零点」とを分析し、再構築するなかで論証された。
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Research Products
(2 results)