2005 Fiscal Year Annual Research Report
初期環境による認知機能の個体差:鳥類の音声学習をモデルとした研究
Project/Area Number |
05J10949
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相馬 雅代 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 音声学習 / 歌鳥 / ジュウシマツ / 発達ストレス仮設 |
Research Abstract |
鳥の歌が学習を必要とする形質となった進化的起源に関しては,近年,発達ストレス仮説(Nowicki et al. 1998)が提唱されている.すなわち,鳥の歌は臨界期に音声学習を通じて獲得されるため,オスの歌学習能力は,孵化後の発達コンディションを反映しているのではないかとするものである.これまで発達ストレス仮説を対象とした先行研究では,歌形質が産出度と複雑さという2つの独立した要因から成ることについてはほとんど考慮されてこなかった.しかし,歌の学習能力がなぜ特定の系統群にのみ進化したのかを解明するためには,歌形質の中でも特に音声学習の影響を受けやすい複雑さのメカニズムに着目し,歌の産出度とは区別して検討する必要がある(Soma et al. 2005).これらの点をふまえて,本研究課題においては,初期発達環境とジュウシマツの歌形質および身体発達との関連を検討した. 鳥の初期発達に影響を及ぼす主たる要因のひとつには,ヒナ間競争が挙げられる.そこで,ジュウシマツの巣内のヒナ数およびヒナ性比と,成熟後の体サイズ,歌形質との関連を調査した.この結果,ヒナ数の多い巣で育ったジュウシマツのオスは,成熟後の体サイズが小さいこと,体サイズと歌の長さとの間に正の相関がみられることが明らかになった.さらに,ヒナ数が多くしかもオスの多い巣で育った個体ほど,歌の複雑さ(線形性指数)の低下がみられた。これらの結果は,歌の産出度(歌の長さ)は身体発達の影響を受ける一方で,歌の複雑さ(非線形性)は神経発達の影響を受けるだろうとする予測に合致するものであった.
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Research Products
(2 results)