2006 Fiscal Year Annual Research Report
初期環境による認知機能の個体差:鳥類の音声学習をモデルとした研究
Project/Area Number |
05J10949
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相馬 雅代 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非斉一孵化 / 母性効果 / ヒナ間競争 / 鳴禽類 / 成長 |
Research Abstract |
昨年度までの研究によって,ジュウシマツヒナの発達コンディションの影響の受けやすさに性差があることが示唆された.この理由として,(1)母性効果の性差,(2)性特異的な成長パターンという2つの要因を考え検討した. (1)母性効果の性差:卵順と性によって卵に量的差異が生じている可能性について検討した.卵重には性と卵順の交互作用の影響がみとめられた.すなわち母親は,産卵順が遅いほど重い卵を産む傾向があった.この傾向はメス卵よりもオス卵でより顕著で,また全般に,メスよりオスで卵重が重かった.このことは,母親がヒナ間競争で不利になりやすい孵化順の遅い卵,脆弱な性であるオスの卵に多く投資し,ヒナの減少を回避しようとする戦略を反映すると考えられる.しかしこれらの結果から,オスの脆弱性を母性効果で説明することはできなかった. (2)成長パターンの性差:性および卵順がヒナ間競争中での発達におよぼす影響を検討するため,里子実験によってヒナ間に実験的に日齢差をもうけることで,ヒナ間競争に有利な年長個体と不利な年少個体との身体発達(体重増加)を比較した.発達初期にヒナの性判定を行い,実験巣が全て両性とも2羽ずつ,各性年少・年長1羽ずつになるようヒナを配置した.各ヒナの体重増加を成長曲線にあてはめ,最終体重と成長速度に影響を与えている要因を分析した.この結果,成長速度には性と日齢差の影響が,最終体重には卵順・性・日齢差の影響がみられた.実験巣で年少群に割り当てられたヒナは成長速度の低減がみられ,特にメスにおいて顕著であった.しかし,最終体重は,年長群・年少群ともメスの方が大きかった.つまり,不利なヒナ間競争下でのメスは成長速度の大幅な低減を示すが,成長期間を柔軟に長くとることで補完していたと考えられる.他方オスは,成長期間の可塑性が低いことが,発達ストレスに対する脆弱性の原因であることが示唆された.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Early rearing conditions affect the development of body size and song in Bengalese finches.2006
Author(s)
Soma, M., Takahasi M., Ikebuchi, M., Yamada, H., Suzuki, M., Hasegawa, T., Okanoya, K.
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Journal Title
Ethology 112・11
Pages: 1071-1078
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