2005 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア帝国末期におけるムスリム社会と国家制度との相互関係(1905-1917)
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05J10961
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長縄 宣博 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ロシア / イスラーム / ムスリム / ヴォルガ / ウラル / 帝国 / 地域研究 / 20世紀 |
Research Abstract |
平成17年度は、国際的な研究レベルに触れ、海外の研究者との関係を構築するという意味で非常に有意義であった。具体的な成果としては、二本の英語論文の執筆と二回の国際会議での報告があった。昨年度の後半は、カザン(1ヶ月)・ウファ(2ヶ月)・オレンブルグ(3ヶ月)・モスクワ(1ヶ月)に滞在し、博士論文の資料を補充すると同時に、将来の研究課題にもつながる資料を開拓した。 私の研究の柱は、20世紀初頭のヴォルガ・ウラル地域における(1)ムスリム聖職者管理システムを中心とするムスリム共同体の構築、(2)地方自治体とムスリムとの協力関係、(3)戦時のムスリム社会にある。二本の英語論文は(1)に関わり、ムスリム共同体がいかにロシア帝国の制度とイスラーム的な伝統の相互補完の上に組織されていたかを具体的に検証した。国際会議での報告の一本も(1)に関わり、ムスリム共同体と警察機構との同盟関係を扱った。もう一本は(2)に関わり、義務教育導入の際のゼムストヴォとムスリムとの創造的な交渉過程を跡付けた。上記の前三都市では、カザフ草原において政府とタタール人がいかにイスラーム政策と教育政策で競合していたかを示す資料を集めた。とくにカザンで教育政策、ウファで信仰政策に関する資料を読んだ。オレンブルグでは、ゼムストヴォに関する資料も補充した。モスクワでは軍事歴史文書館で、(3)について軍隊内部のムスリム対策に関する文書を読んだ。 オレンブルグとモスクワでは、新しい人脈を広げるという意味でも収穫があった。オレンブルグでは、西部カザフスタンの若手研究者と意見を交換できた。モスクワでは旧ロシア帝国領内のイスラームという国際的な研究プロジェクトの中心人物と知り合い、私も今後このプロジェクトに参画することになった。
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Research Products
(1 results)