2006 Fiscal Year Annual Research Report
戦後中国の思想的課題とそれに対する人々の取り組み:官製の修史と個人の自叙を中心に
Project/Area Number |
05J10985
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若松 大祐 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 史学思想 / 史学史 / 学術史 / 台湾:中国:日本 / 張学良 / アメリカ研究 / 地域研究 / 物語、語り |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦後冷戦期中国の思想の歩みと特徴とを史学史の観点から闡明することである。昨年度に引き続き、本年度の研究を通じて得られた理解は、二点に集約できる。 1、本研究が考察範囲とする冷戦期とはいかなる時空なのか。日中戦争期から冷戦前期までを三段階に分けて、張学良という人物が展開する過去、現在、未来に対する物語について考察した。個々人がそれぞれの物語を持つ状況は、個人が自らの物語と官製の物語とを別々に使い分けて展開する状況を経て、後には個人が官製の物語のみで自己を語る状況へ至る。こうして固定化された官製の物語は、冷戦後期においてどのように溶解していくのか。この解明が、今後の課題となろう。〔若松大祐、「抗戰時期江南地區與被軟禁之張學良:官方歴史的演變」、杭州:江南科研「交流會」、2007.03.(20-)21。〕 2、戦後中国における歴史学(近代史学)はどのように展開してきたのか。その歩みを相対的に理解するために、戦後台湾におけるアメリカ研究の歩みを、日本を始めとするアジア・太平洋地域のアメリカ研究との比較の内に考察した。これは、アメリカ研究を、地域研究という観点から中国(近代史)研究の近接領域として理解したものである。日本で重視されてきた教養や学際性(Inter-discipline)といった概念は、台湾でも中国でも定着しなかった。台湾では、アメリカ舶来の近代化という概念を大いに輸入した。中国(大陸)では、1980年代の改革開放期になって国際問題として地域研究を始めるも、専門化(細分化)がまだ充分に進んでいないようにみえる。では、アメリカ研究のような近接領域は、戦後中国における中国近代史研究とどのような相互影響関係を持ったのか。この解明が今後の課題となろう。 3、戦後中国における歴史学研究の歩みや、歴史観の異なる諸集団の共存の方法について、昨年度の研究が今年度に公刊された。
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Research Products
(3 results)