2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦後中国の思想的課題とそれに対する人々の取り組み:官製の修史と個人の自叙を中心に
Project/Area Number |
05J10985
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若松 大祐 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 史学思想 / 史学史 / 中国:台湾:日本 / 冷戦 / 正統、異端 / 中国国民党、中国共産党 / 権威 / キリスト教 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦後冷戦期中国の思想の歩みと特徴とを史学史の観点から闡明することである。本年度の研究を通じて得られた理解は、三点に集約できる。 1、戦後中国における歴史学研究の歩みは、従来どのように説明されてきたのか。戦後日本における近代中国キリスト教史研究の歩みと、戦後台湾における中国学(Sinology)の歩みとを事例にして、先行研究を整理、考察した。今後の課題は、特に同時代の国内外の政治的経済的状況を充分意識した史学史の構築にあろう。〔「近代中国基督教史研究的回顧与前景:以戦後日文著作為中心」、台北:「日本漢学的中国哲学、思想研究:観点、方法論、以及其意義」国際学術研討会、2005.05.28、会議論文。〕 2、本研究が考察範囲とする冷戦期とはどういった時空なのか。満州事変という過去に対する張学良の記述や発言を事例にして、巨視的に考察した。過去を説明する際、自身の主張の確からしさを、1950年代の彼は義務的権威(軍人の権威。命令の時空。)に、1990年代の彼は知識的権威(学識者の権威。真偽の時空。)に求めていた。今後の課題は、冷戦と冷戦後との境界線の確定にあろう。〔「張学良眼中的九一八事変:自命令至命題的歴史叙述方法」、中国遼寧省:「中国六年局部抗日戦争史」国際学術研討会、2005.09.18-20、会議論文。〕 3、歴史観の異なる諸集団はどのように共存を図るのか。「官製の修史と個人の自叙」という観点から、1950年代初期中国におけるマルクス主義とキリスト教とが展開した、「信教の自由」及び「国家の安定」をめぐる交渉、折衝を具体的に考察した。こうした中国共産党の文化政策を、同時期の台湾で展開された中国国民党の文化政策と比較すると、共産党は他者の主張を受け入れる場合、自身の論理体型によって再構成する度合いがより強いと思われる。今後の課題としては、こうした事例研究を増やすことと、複数の事例を本研究の副題につなぐキーワードの模索とにあろう。〔「1950年代初期中国的馬克思主義与基督教共同挙行三自運動」、台北:「第二屆近代中国思想与制度」学術研討会、 2005.10.22-23、会議論文。〕
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Research Products
(1 results)