2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
賀川 史敬 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | モット転移 / 臨界現象 / 強相関 / 有機導体 / 輸送特性 / NMR |
Research Abstract |
1.モット絶縁体であるK-(BEDT TTF)2Cu[N(CN)2]Cl (以下K-Cl)をヘリウムガス圧を用いて加圧し、モット転移近傍の金属相に制御した後、その圧力下においてNMR測定を行なった。この実験によって、モット転移近傍における超伝導相においては、スピン-格子緩和率1/T1の温度依存性にコヒーレンスピークが見られないこと、1/T1〜T3に従う可能性が高いことが明らかになった。これらの結果は、超伝導ギャップにノードがあることを強く示唆している。また、超伝導転移温度よりもわずかに高温の金属相においても、1/T1やナイトシフトが温度依存しており、通常のフェルミ液体には期待されない振る舞いが観測された。これがモット転移近傍の金属相にのみ見られる振る舞いだとしたら興味深い。今後、様々な圧力下の金属相においてNMR測定を行い、1/T1やナイトシフトがモット転移からの(圧力温度相図上における)距離の関数としてどのような振る舞いを見せるのか、その系統性を明らかにし、High-Tcなどにおけるフィリング制御型モット転移との類似性・相違点を議論することが望まれる。 2.DM相互作用とZeeman相互作用を含むHeisenberg模型を平均場近似の範囲内で数値シミュレーションを行い、磁場によって誘起されたlocal momentは温度に依らずnon-colinearな状態になること、磁場下では温度掃引によって厳密な意味での反強磁性転移が起きないこと、磁場によって反強磁性磁化率X(q)の発達が抑えられることが見出された。これらの結果は常圧下のK-Cl(モット絶縁体)のNMR測定において、低温においてもスペクトルの分裂が見られないこと、1/T1が磁場と共に抑制されるという、通常見られない振る舞いを定性的に説明している。この実験結果及び平均場近似による数値シミュレーションの結果を1つの論文にまとめ、近日投稿予定である。
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