2005 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算に基づくナノ構造キャパシタンスの理論解析
Project/Area Number |
05J11094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 倫子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 静電容量 / 第一原理計算 / トンネル電流 / NC-AFM / エネルギー散逸 / ジュール熱 / 変位電流 / STM |
Research Abstract |
[1]NC-AFMの探針と試料が近づくと、通常探針-試料間相互作用によりエネルギー散逸量は増加する。しかし最近の実験で距離が短い領域で散逸量が急激に減少する振舞いが報告された。そこで本研究ではこの振舞いを解明するため、散逸の起源の一つである探針振動に伴うジュール熱に注目し、探針-試料間静電容量からジュール熱を評価した。探針と試料には平行平板ジェリウム模型を用いた。すると、探針-試料間距離が非常に短い領域ではトンネル電流の発生により距離の減少に伴い静電容量が減少した。そのため、探針の振動振幅が小さい場合、探針-試料間距離が短い領域でジュール熱は減少し、実験結果と定性的に一致する振舞いを得た。これは静電容量に現れる量子効果をそのまま反映しており、実験で得られた散逸が減少する振舞いの一因にジュール熱の減少があることを明らかにした。 [2]STM探針-試料間静電容量を理論的に評価すると、探針-試料間距離の減少とともに静電容量が減少する振舞いをWangらが報告したが、彼らは電圧印加時の電子状態を自己無撞着に解いていない。そこで彼らの結果の妥当性を検証したところ、自己無撞着計算では静電容量は距離が非常に短い領域でも増加した。非自己無撞着計算では彼らと一致する振舞いを得、この振舞いは誘起電荷が正しく評価できないために現れることがわかった。一方、静電容量の増加理由にはバイアス電圧が関係することを見出した。すなわち、本手法では左右電極のフェルミ準位差をバイアス電圧としているが、トンネル電流が流れている場合、電極内部の電荷中性条件によりフェルミ準位を調整する。調整による変化はトンネル電流が強い系で大きな値となり、調整したバイアス電圧を用いると静電容量は定量的に減少する。ナノ構造でのバイアス電圧は従来十分考慮されておらず、散乱状態を扱う電子状態計算手法全般で注意が必要であることを示した。
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Research Products
(1 results)