2005 Fiscal Year Annual Research Report
重元素の動的ふるまいに着目した銀河団ガスの化学進化の研究
Project/Area Number |
05J11102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯塚 亮 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線天文学 |
Research Abstract |
X線観測が明らかにしてきた銀河団に存在する大量の重元素はどこからやってきたのか。重元素は星の核融合でしか生まれないため、星の一生の最後に起こる超新星爆発により重元素は銀河に放出され、銀河から銀河団へ何らかの形で供給され、銀河団全体に広がる。超新星による重元素生成の理論モデルから、銀河団中の重元素の起源を解明する試みが今までなされてきた。しかし、そのモデルでは到底説明できない大量の重元素が、どのように銀河から銀河団へ供給され、銀河団全体へ広がっていくのか遅々として分かっていない。本研究は、この本質的なプロセスに1つ1つ着目し、今までにないアプローチから重元素の起源を解明することを目的とする。 本年度は 私はおとめ座銀河団の銀河NGC4388から、重元素が放出されている現場をX線で初めて検出した。銀河団に対して高速で走る銀河から、ガスが放出されている現場を捉えた。このことは銀河ガスが動圧によりはぎ取られたことを強く支持しており、X線観測ははぎ取られたガスを直接検出するのに最善のプロープであると言える。この成果を論文として提出し、現在審査中である。 これを出発点として、Chandra衛星の高精度のX線撮像で、近傍の銀河団が空間的に分離しやすいことに着目し、最も近いおとめ座銀河団のX線観測を軸に、銀河団の重元素の起源解明に迫ることにした。銀河ガスのひしゃげ具合から、どれも銀河団ガスによる動圧を受けたような兆候が見られた。さらに、遠方銀河団まで含めたメンバー銀河について、銀河ガスの広がり、明るさ、質量を系統的に調べたところ、動圧によるはぎ取り効果が一般的に起こっていることを立証することができた。これは銀河から銀河団へ重元素が供給されるメカニズムそのものであり、以上の結果を博士論文としてまとめた。
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