2006 Fiscal Year Annual Research Report
高赤方偏移銀河の観測で探る銀河の形成・進化と宇宙再電離の歴史
Project/Area Number |
05J11115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 一陽 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 可視光天文学 / 観測的宇宙論 / 高赤方偏移銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 / 宇宙再電離 / 観測天文学 / 撮像・分光 |
Research Abstract |
宇宙がビッグバンによって誕生した後、宇宙空間の物質は電離状態にあったが、やがて冷えて中性水素原子を形成し、宇宙を中性化した。その後、宇宙で初めて星や銀河が誕生した時、その光で宇宙空間の中性水素を再び電離した。この「宇宙再電離」時期は、これまでの観測から、赤方偏移z〜15頃に起こり、z=6-7(宇宙誕生約8-10億年後)頃に終わったと考えられている。しかし、正確な時期は突き止められていない。また、2005年5月迄は人類によって発見された最古の銀河は、赤方偏移z=6.6のライマンα輝線銀河(宇宙を再電離させた天体の一種)であり、それ以上昔(z>6.6)に銀河が存在したかは確実には分かっていなかった。 そこで本研究では、独自に開発したフィルター(z=7のライマンα銀河探査に対応)と口径8.2mすばる望遠鏡を用い、更に昔のz=7の宇宙にも銀河が存在するかを探査した。2005年3月に、すばるディープフィールドという天空領域を撮像観測し、z=7のライマンα銀河候補を2天体選び出した。同年5、6月、2006年4月にそれらを追分光観測し、その内1つを本物と同定できた。これにより、宇宙誕生わずか8億年後にも既に銀河が形成されている事を初めて突き止めた。また、ライマンα銀河の空間個数密度は、z=3-6(宇宙誕生約9-20億年後)の間ではほぼ一定である事が観測で知られているが、本研究の解析から、z=6-7(宇宙誕生約8-9億年後)の間で個数密度が有意に減少している事が分かった。これは、宇宙を再電離しているライマンα銀河の光が中性水素で減衰され、観測される個数が減った事を意味し、宇宙再電離の終焉時期がz=6-7である事を観測的にとらえた最初の証拠となった。 この結果は、2006年9月13日、国立天文台(東京三鷹市)で記者発表し、翌日、英国科学誌「Nature」に掲載された。また、2006年9月に開催された日本天文学会で口頭+ポスター発表した。2006年12月に発行された天文月報第100巻1号にも掲載され、表紙にも起用された。更に、2007年3月にニュージーランドで開催された国際研究会議「A New Zeal for Old Galaxies]でも口頭発表した。
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Research Products
(2 results)