2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11179
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新見 康洋 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子ホール効果 / グラファイト / 走査トンネル顕微鏡 / 2次元電子系 / 半導体 |
Research Abstract |
磁場中2次元電子系で観測される量子ホール効果は、物性研究の中で最も基本的かつ重要な量子現象の1つであり、これまで多様な研究が行われている。一般にホール抵抗が量子化値をとる局在状態では、電子は不純物や試料端の作る等ポテンシャル線に沿って磁気長程度の幅をもって運動すると考えられているが、それを実空間観測した例はこれまで報告されていない。そこで本研究では、磁場中で原子分解能をもって作動する超低温走査トンネル顕微鏡を使って、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)の表面2次元電子系における格子欠陥周りの局所状態密度(LDOS)を走査トンネル分光観測した。試料-探針間のバイアス電圧を掃引すると、ランダウ準位間の谷のエネルギーでは欠陥の周りに局在した状態が、まだランダウ準位のピークのエネルギーでは試料全体に広がった電子状態が交互に観測された。欠陥付近に局在したLDOS分布は磁気長程度の半径をもっており、磁場中で1/rポテンシャルに捕獲された2次元電子系の基底状態に対する波動関数の計算結果とほぼ一致する。また、1つの局在したLDOS分布、つまり基底状態しか束縛されないという実験事実は、電子間クーロン相互作用が重要であることを示している。これらのことから、HOPG表面で観測されたエネルギーに依存した欠陥付近の電子状態は、量子ホール効果の局在状態と非局在状態に対応していると結論付けられる。本研究によって量子ホール状態の電子局在の様子がナノメートルスケールで明らかになっただけでなく、電子間相互作用が整数量子ホール状態でも重要な役割を果たしていることがわかった。
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Research Products
(4 results)